松本直治

短絡的に言ふなれば、原子力発電所で多量の放射線を浴び、ガンに冒され、闘病の末、死亡したことになる。私の思いを率直に云へば、平和利用の原子力の『絶対安全』を信じ、その『安全』に裏切られたことになる。これは私にとって衝撃の出来事であった。 ** 原子力発電所は、その後ますます増設され、次々と日本列島を汚染の渦に巻き込んでゐると私は思ってゐる。そのことは、かつて戦争の足音が国民の上に暗く覆いかぶさった過去の思ひに繋がるのだが、一般にはその原発の持つ恐怖が意外に知られてゐない。あたかも戦争への道が、何も知らされないうちに出来上がっていったやうに―